おばあちゃんのひとりごと

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死を従容した二人の女性

平成17・1・27発行
発行所 株式会社 熊平製作所
「抜窣のつずり その六十四」より

 死を受容した二人の女性 

             日野原 重明

 今年も「花まつり」の季節が来ました。私はこのころにになると、結核
で亡くなった十六歳の少女を思い出します。亡くなったのは夏でしたが、
母親とともに熱心な仏教徒だったので、花まつりと結びつくのです。
 今でいう研修医として京都大学付属病院に入院した1937年、その少女
に私にとって最初担当患者となりました。当時は特効薬もなく、多くの人が
結核で亡くなっていた時代です。

 少女の母親は夫を早くに亡くし、一人娘の彼女と二人で近江(滋賀県)の
紡績工場で働いていました。その娘が入院したのですが、母親は働かなけれ
ばならず、ニ週間に一度来るのが精いっぱいだったようです。

 いよいよ病気が進行して、危篤状態になったある日曜日、私は病院に出掛
けました。すると、「先生、わたしはもうすぐ死んでしまうような気がしま
す」と言いだしたのです。そして、お母さんに心から感謝して死んでいった
と先生から伝えてくれ。とも、いいました。

 私は驚き、「死ぬなんてそんなばかなことをはない」と言ったのですが、間
もなく少女は亡くなりました。

 私は、この別れに大きなショックを、受けたのです。なぜあの時、あなたは
母親孝行な子だった、安心して成仏しなさいと、死を従容した彼女の心を、大
切にしてあげられなかったのかと、とても悔やみ、それは今も消えることがあ
りません。私が日本にホスピス治療を広めるようと努力を始めたのは、ニ十年
ほど前ですが、その源泉は実は、この少女への苦い思いにあるのです。

 少女の死から四十年後、私は哲学者、梅原猛氏の「湖の伝説ー画家・三橋節子
の愛と死」を読みました。そこには若き画家の三橋さんが骨の肉腫のため右手の
手術を受けた後、左手で絵を描き始め、三回目の入院中に亡くなったことが書い
てありました。

 節子さんは、近江の「花売り峠」に伝わる、貧しい花売りの女の子が疲れ切っ
てその峠で亡くなったという物語を絵にしました。花を一本持って横たわる娘の
姿に、節子さんは自分を重ねたのかもしれません。

 そして節子さんは最後の入院の前日、死の三カ月前ですが、もう帰れないと、
覚悟しました。自分たちの結婚式の録音テープを聞きながら「死んだら教会でお
葬式して欲しい」と夫に語り、洗礼を受けられました。

 私にはあの少女と節子さんとの姿が重なります。
 少女は極楽へ、若い女性画家は天国へ召されたのだと思いますが、ともに短く
ても地上に生きる幾ばくかの時を与えられたことを、感謝し、死を受容してこの
世を去ったその澄んだ精神に、わたしは打たれたのです。

(ひのはら しげあきー聖路加国際病院理事長、新老人会長・
 朝日新聞けんこう面「92歳・私の証・あるがままに行く・16・4・10)

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  生きる

  生きている幸せ
  生きることの幸せ
  生きられる幸せ
  
  生きてゆく
  生きよう
  生きられる
 
  生きること
  生きられることに
  感謝して頑張ろう

  大事な命を大切ににしないとね
  命が有ることを感謝し
  さあー健康で老いを生きるわ 
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Comment

こんばんは^^

朝日新聞を取っていた頃、日野原さんの記事を楽しみにしていました。
イラストも可愛らしくて、いつも楽しみでした。

毎日を愉しんで、命を大切にしなくちゃね。
  • posted by 夢桜
  • URL
  • 2014.02/19 20:11分
  • [Edit]

Re: こんばんは^^

 子供の頃は、体弱かったと何かで、
 読みましたが(忘れてしまったけど)もう100歳
 をこえられたでしょうね。ご立派ですね。

 楽しみ明るくね。頑張らないと^ね。
  • posted by フェアリーグランマ
  • URL
  • 2014.02/19 20:55分
  • [Edit]

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ひとり暮らしのおばあちゃんですが、毎日を詩や短歌を作って楽しんで暮らしています。

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