おばあちゃんのひとりごと

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長嶋サンの視線がチラリチラリ私の足もとに・・・

「抜粋のつずり」その六十四
             株式会社 クマヒラ
             株式会社 熊平製作所
  ……足元を見る……
                   壇 ふみ

 私の父は小説家だ。筆の遅い、怠け者の物書きだったから、我が家には悲痛な顔の
編集者の出入りが絶えなかった。
 編集者の靴もまた、悲しげだった。いつも玄関の三和土の隅っこのほうに、目立たな
いようにひっそりと脱ぎ置かれている。原稿を取れても取れなくても、気持ちよくお帰りい
ただけるように、その靴を、堂々と真ん中に据え直すのが、娘である私の役割だった。
 思い出すのは、ほとんどの靴が、履き古され、いびつにすり減り、くたびれきっていた
ことである。真面目で誠実とはこういうこと……と、私はあの、靴揃えの日々に、刷り込み
を受けてしまったようだと思う。
 女優になってからも長いこと、我が家に来ていた編集者たちとほとんど変わらない、悲
しげな靴を履いて、平気でいた。きちんと磨いていれば、どんなボロ靴だって、なに恥ず
かしいことがあろう。
 私は足もとにほとんど無関心だった。(あ、足もと以外にも無関心でしたね。ハイ)。
 しかし、そんな私にも、たった一度だけ、なんだか足もとが気になってならない、という
ことがあった。
 それは、むかし、むかし、巨人軍の長嶋監督にお目にかかったときのことだった。
 最初の監督時代だったか、それとも、浪人中であったか、記憶は定かではない。
 覚えているのは、長嶋サンの視線が、チラリチラリと私の足もとに注がれているような気が
してならなかったことである。誤解なきよう。天下の長嶋サンなのである。決していやらしい目
つきなのではない。しかしなに恥ずかしいことがないはずの足もとが、とても恥ずかしく、居心
地悪い……。
 それから十数年」たって、長嶋さんの御子息、一茂さんがプロ野球の選手になり、マスコミを
賑わすようになった。
 あるとき週刊誌で、一茂選手について、番記者が覆面」座談会をしていた。
 「一茂は靴が好きだよね」
 と、誰ともなくいいだした。
 「ウン、オレ、靴を贈られたことがある」
 と一人が話し出す。
 「オレのボロ靴、ジーと見ていて、よっぽど気の毒に思ったのかな」
 「あ、オレも言われたことがある。「記者サン、いい靴、履いてますね」って」
 「アレは、オヤジの影響だろう」
 と、いま一人がいった。
 「監督は「ヒトは靴を見ればわかる」って、つねずね言っていたらしいから」
 そのとき、十数年前の居心地の悪さが、いっきによみがえった。そうか。
 そうだったのか。長嶋サンは、女優のボロ靴をみていたのだ!
 あのボロ靴で、ダンフミにどんな評価が下されたのかと、以来、とても気になっている。
                (だん ふみ=女優・幻冬舎「どうもすみません」16年8月刊)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 いつも、これを読みますと「プッー」と笑えるのです。これは、私の亡き父の教えです。
 明治の父です。長嶋サンもそういっておられたのかと思うのです。
 
 「靴だけは、いいものを履きなさい。人は靴で、その人を判断するものだから……」
 
 昔のことですが、例えば旅館にゆくと靴を見て、どんな人かを見る?……って、父から
いいきかされたものです。
 いまの私には、靴を選ぶのは、笑えるのですが、先ず、値段、たくさん歩き悪くなるので、
安さで決めてる。情けない。トホホなのである。
父が空から「なんという、おしえを守らんなあ―」と言っていることでしょう。ワッハ、ワッハ。
 
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Author:フェアリーグランマ
ひとり暮らしのおばあちゃんですが、毎日を詩や短歌を作って楽しんで暮らしています。

心に残った本の一節を御紹介させて頂いております。

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