おばあちゃんのひとりごと

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心の問題は、心で答えて・・・(森脇と瀬島の関係)

「人間的魅力の研究」伊藤肇著より
ーー続きーー
 ……誠心誠意の強さ……

 伊藤忠はこの条件を全部のんで瀬島を入社させたが、早くも五年目業務部長に抜擢し
た。たまたま、持ち合いをしていた芝浦製糖(現三井製糖)の100万株が、どういうからく
りだったのか、泣く子も黙る高利貸、森脇将光の手に落ちた。
 重役会議は騒然となった。相手が森脇ではいかにも悪すぎる。多分、これをきっかけに
無理難題をふっかけてくるに相違ない。何度も会議を重ねたが、妙案などでてくるわけが
ない。
 とりあえず、当たってくだけろということになり、瀬島に「株を取り戻してくるよう」と同行を
頼んだが、瀬島は全部断った。
 「一人や二人の屈強な男がついていっても、むこうはこういうことはプロで、もっとも上手
だろうから、かなうわけがない。それよりも小手先の策動は一切やめて、丸腰単身で僕ひ
とりがのり込んだほうが、かえって話のつく確率が強いのではないか」といって、ただ一人
森脇事務所を訪ねた。
 薄暗く、曲がりくねった廊下をかなり歩かされて、一番奥の部屋へ案内された。部屋へ入
つて、ひょいと見ると、床の間に、「南無法蓮華経」の、軸がかけられ、あかあかとともしたお
灯明に三方に載せられた抜き身が不気味な光を放っていた。
 森脇は、その前で恭々しく合掌してから、おもむろに瀬島と向いあった。
 作家の内田百聞によれば、「こういう商売をしている連中には、意外と信心家が多い」そう
だから、森脇のとった行動は特にトッピなことことでもないだろう。
 それにしても、異様な雰囲気の中で森脇の鋭い眼ににらみ据えられるのはあまりに気持ち
のいいことではない。森脇は、いきなり本論に入って、手形に関する二、三の質問を浴びせか
けてきた。抑留生活から帰ったばかりの瀬島に手形などさっぱりわからない。答えようもない
ままに森脇の顔を見つめていると、なめられたと思ったのか、「お前は商社マンのくせに手形
を知らんのか!」と声を荒げた。
 どんなにわめかれても、わからぬものは「わからぬ」という以外に答えようもない。森脇は自分
の言葉に自分が昂奮して一層激しくいいつのった。せっぱつまった瀬島は軍隊生活と捕虜の、
11年しかしらない自分を、ひかえめに訥々と語った。自らを語るのはのは瀬島の最も嫌いなこと
だし、不得意なことだから、うまいはずがなかった。だが、その訥弁には人間の誠意がこもって
いた。
 森脇はいささかでもウソが入ったら容赦はしないぞ、と厳しい顔できき耳をたてたが、話がひと
通り終わった途端にパット居ずまいを正すと「それは済まんことをした」と詫びた。予期しなかった
ことだけに、今度は瀬島のほうが驚いた。
 森脇は、さらに意外なことをいった。「軍人は国家と民族に対して、命を投げ出すものときか
されていたが、君をみて、それがうそでないことがよくわかった。よし、株券は全部、君にくれてや
ろう。」喜んだ瀬島が返って重役会に報告すると、重役会は豹変した森脇の態度が薄気味悪くて
しようがない。

 「ただより高いもんはない。というじゃあないか。あの札つきの高利貸から株をタダでもらったら
後でどんな因縁をつけられるか、わかったもんじゃあない。ここは、やはり、現金をひきかえに株
をとってこんとあかんな。」
 
 やむなく、瀬島は、翌朝、経理と株式の二人の課長を連れて、森脇を訪れ、株を引きとるととも
に「どうしても代金をとっていただきたい」と懇願した。すると、森脇は「わしは君に、心の底から
の、好意を持ったからこそ、この株を返す気になったんだ。その俺の気持ちに君がむくいるという
なら、日本酒の二升も届けてくれ。それでいい」と現ナマの受け取りは、頑として拒否した。心の
問題は心で答えてもらいたいとでもいいたかったのだろう。
―――――――――――ー続きーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       幸せというのは
    
    なんでもない日々のなかの
    なんでもないなかにあるのだ
    
    それがしあわせだということに
    気が付けたら
    
    もう大丈夫
    その些細なその幸せ
    
    素晴らしいことなんだ
    自分にわかったらいい
    
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ひとり暮らしのおばあちゃんですが、毎日を詩や短歌を作って楽しんで暮らしています。

心に残った本の一節を御紹介させて頂いております。

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